あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 そして、三回目。


 振り返る前に私の腕はそっと取られ、搭乗口から少し離れたところに引っ張られていき、そのままギュッと抱き寄せられた。小林さんの胸に抱き寄せられ、心臓の鼓動を聞く。その命を繋ぐ音に急に胸が苦しくなる。小林さんの温もりを感じながら、私は静かに涙を零していた。


 最後まで泣かないつもりだったのに、最後の最後に私は涙を流してしまった。


「美羽」


 小林さんは私を抱き締めたまま、少し身体を震わせていた。全身で感じる思いに私の頬は涙で濡れてしまった。流れる涙は小林さんのシャツが濡らしていくけど小林さんは私を抱き締める手を緩めなかった。


「もっと格好よく送り出したかったのにな」


 小林さんの心の声を聞くと私と同じように平静を保とうとしていたのが分かった。耳元に感じる吐息には真剣な色が込められていて、私の胸の鼓動を激しくする。


「俺のことを好きって言って」


 真っ直ぐに見上げると私の大好きな人がそこにいる。真っ直ぐな視線の先には少しだけ目を赤らめた小林さんがいる。


「蒼空さんが好き。大好き。」


「ありがとう。嬉しいよ。俺も、美羽が好き。大好きだよ…。身体には気を付けて、困ったことがあったら絶対に俺に相談すること。それと…。これだけは忘れないで。帰ってきたら結婚するから」


「はい。わかりました。行ってきます」


「うん。行っておいで」


 私は頬を流れる涙を拭うと笑うことが出来た。それはさっきの我慢したものとは違っていた。
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