あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「あんまりにも翔が美羽に優しいから特別な関係かと思ったわ」


「一緒に働いていて、フランスまで来たのだから親切にするのは当たり前だろ。キャルが美羽ちゃんのようなスーツケースを持っていたら、持ってやるけど、キャルのバッグはそんなに小さいし自分で持てるだろ。俺の反応を見て楽しんでいるキャルの相手をするほど暇じゃない」


「確かにそうね。さ、美羽。荷物は翔に持って貰って、さっさとアパルトマンに行きましょ」


 そういうと、キャルさんは私の腕を取ると、出口に向かって歩いて行く。私はというと、キャルさんに引き摺られるように歩くしかなかった。後ろを振り向くと、折戸さんはニッコリと笑って、私のスーツケースを持って歩いてくれていた。


「俺は大丈夫だから」


「すみません」


「気にしないで」


 キャルさんは日本語がとっても上手で一般の会話には困らない。私も少しはフランス語を話すことが出来るけど、こんなにも流暢に日本語を話してくれるから、安心もしていた。そして、後ろには折戸さんも居てくれる。一番心配だったことがキャルさんと折戸さんのお蔭で安心に変えてくれた。


 折戸さんの車は空港駐車場の中でも一番奥の所に停められていた。ここから空港の中までだったら、かなりの距離があり、ここから全力で走ればさっきの折戸さんの状態になるのは納得だった。むしろ、走って来れただけ凄いもしれない。


 フランスに降り立った私が心細い思いをしないようにだけ走ってくれたのは折戸さんの優しさで、その優しさに私は感謝していた。

 
「ここから走ったら疲れましたよね」


「疲れたとは思わなかったよ。美羽ちゃんが不安で心細い思いをしている方が俺にとっては辛いからね。さあ、どうぞ」
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