あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 私がこれから過ごす部屋の中は夕日の色に染められていた。カーテンを全開した窓からはパリの風景が広がっていた。切り取られた風景画のように綺麗で私は目を奪われてしまいそうになる。日本とは全く違うこの場所で私はこれから過ごすのだとジワジワと実感し始めていた。


「美羽の部屋の家具は生活に困らない範囲で準備したけど、足りないものは明日にでも一緒に買いに行きましょ」


 生活に困らない範囲で準備したというけど、これで十分だと思った。何も買い足す必要はないように感じる。私が生活するのに必要なのは簡単な家電とベッドだけで、それ以外に何が必要なのだろう?


 キャルさんが準備してくれたものは女の子が好きそうなものが揃っている。机も棚もとっても白を基調とした木製のシンプルな中に可愛さがあるものだったし、ベッドのリネンはシンプルで私が好んで使うようなものだった。


「キャルさんありがとうございます。とっても可愛いです」


「よかったわ。翔に、美羽はシンプルなのが好きだと思うって言われていたから、美羽の好みそうなのを選んだのよ。私の部屋は微妙なの。だから美羽の部屋は普通のフランスの女の子が好きそうな部屋にしてみたの」


 微妙な部屋というのが気にはなったけど、私はこの自分の部屋を気に入っていた。


「さ、お腹空いたわね。美羽。私が今日は美味しいものをご馳走するわ。私が大好きなレストランがあるの」


 機内食を食べてからかなりの時間が経っていて、キャルさんに言われて自分が空腹なのを感じた。でも、今からレストランとなると、どうしようかとも思った。気分的にはカップラーメンで終わらせたいくらいだけど、せっかくキャルさんが誘ってくれているのだから、行った方がいいだろう。


 ありがとうございますって言いかけた時だった。


「美羽ちゃんは長いフライトで疲れていると思うから、レストランでの食事は明日にして、今日は何かデリでも買ってきたらどう?」
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