あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 最初は日本のこととか、フランスのことなどの話をしていたと思う。

 
 キャルさんは日本の今の状況を知りたがったけど、研究所で籠っていた私には気の利いた話が出来るでもなく…。それでも自分の知っていることを話すとキャルさんは楽しそうにその話を聞いていた。折戸さんはそんな私とキャルさんの会話にたまに口を開くけど、言葉は多くなかった。


 ワインのアルコールが身体に回り始めると、私もキャルさんもいつしか研究の話になっていて、自分の研究理論について話が弾む。私が静岡でしていた研究とキャルさんがパリでしている研究は全く違っている。


 場所が違うのだから当たり前だけど、今までの研究の流れで行けるのではないかと思っていた甘い考えが打ち砕かれた。私でよかったのだろうかと不安になる。


「凄いですね」

「何が?」

「研究の内容も考え方も」


 私はキャルさんと一緒に研究をするのだから、まずは今までのレポートとか論文から目を通さないといけない。キャルさんは自分のバッグから研究結果の書きこんだレポート用紙を出すと、ワインを片手に私の方にそのレポート用紙を差し出したのだった。英語で書かれたそのレポートは私の瞳から鱗を落とすかのようなもので、こんな研究を私は思いつきもしなかった。


 レポートの内容から、私が一緒に仕事をする人は中垣先輩と同レベルかもしかしたら、先輩の知識さえも凌駕しているのかもしれない。そんなレベルだった。

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