あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 折戸さんがそういったのは日付が変わった頃だった。三人で空けたワインのボトルがいくつか部屋の隅に立てられていた。折戸さんが買ってきたものだけでは足りなくて、結局はキャルさんのワインも登場しての飲み会になってしまった。それは日付を変わった今になっても続いていた。


 フランスに来ての初めての夜。私は寂しく一人で過ごすわけでもなくたくさんの笑いに包まれていて、こんな楽しい時間を作ってくれたキャルさんと折戸さんに感謝の気持ちでいっぱいだった。一人にしないという優しさを私は感じていた。


「私も帰ります。本当にありがとうございました」


「もう。翔も美羽ももう少し飲みましょ」


 キャルさんはワインのグラスを持ったまま、少し拗ねたような表情を浮かべた。名残惜しいのは私も一緒だけど、日本からのフライトの疲れもワインが身体に回ると徐々に感じさせている。今なら、ベッドに横になったと同時に寝れると思う。


「キャル。美羽ちゃんは今日、日本から来たばかりだよ」

「…。そうだったわ。あまりにも美羽がいるのは当たり前のように感じてしまって…。今日来たばかりだというのを忘れてた。ごめんなさい、美羽。疲れさせた?」


「いえ。とっても楽しかったです。キャルさんと一緒に飲めてよかったです」


「私もよ。隣の部屋だし、また一緒に飲みましょ」

「ありがとうございます」


「俺も混ぜてくれる?」


 そんな折戸さんの言葉にキャルさんと二人で『もちろん』と言ったのだった。
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