あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「美羽ちゃんが困ったり、寂しい思いをしないようにして欲しいと頼まれたよ。で、俺が『口説いたらどうするの?』って聞いたらなんて答えたと思う?」


「小林さんは何て?」



 折戸さんから『口説く』なんてとんでもないことを聞いて小林さんはどう思ったのだろう?聞いてはいけないかもしれないけど、聞いてみたい。そんな小林さんの気持ち。


 冗談で誤魔化すのかな?気にしないのかな?一応、婚約しているのだから…。出来れば…。


「蒼空はね『それでも美羽ちゃんが寂しい思いをしたり、困るよりはいいです。でも、美羽ちゃんは折戸さんには揺れないと思います。』って断言されたよ。清々しいほどのハッキリとした口調だったよ。よかったね。美羽ちゃん。蒼空はきちんと美羽ちゃんのことを分かっている。あのやんちゃだった蒼空も美羽ちゃんと付き合い出して一段と成長した。嬉しいよな。本当に」


「そうですか」


「うん。ハッキリとね」


 折戸さんの顔は本当に嬉しそうに微笑み、爽やかに夜の風を纏っていた。人生のうちにどのくらいの人に出会うかわからない。でも、折戸さんに出会えたことは本当に幸運としか言いようのないことだと自分でも思う。


「私。二年の間に小林さんに負けないくらいに頑張りたいと思っています。今度会った時に恥ずかしくないようにしたいですし、フランスに行かせたことを後悔させるようなことはしたくないです」


 フランスに来る時。私は小林さんとの別れも考えた。付き合って間もない時期だったし、その時期での遠距離恋愛は到底困難を極めると思っていた。でも、小林さんは婚約という形で私との付き合いを形にしてくれた。先のことはわからないけど、あの日のことは一生忘れないだろうと思う。


 後悔だけはしたくない。
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