あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
『そうですか?』


『ああ、今度会った時に美羽ちゃんに恥ずかしくないようにしたいとは思っている。美羽ちゃんの傍にはこれからあの折戸さんも居るんだし、俺も成長しないと』


『私は今のままの、小林さんがいいと思いますが』

『男には色々あるんだよ。じゃ、そろそろ行かないと、電車が来る』


 時間はちょうど私が日本に居た時に小林さんと一緒に電車に乗っていた時間に差し掛かっていた。私はフランスに居るのに、日本での小林さんの時間は変わらずに流れていく。それも仕方ないことで自分の選んだことなのに寂しく思ってしまうのは私が我が儘なのだからだろう。


『頑張って仕事をしてくる。だから、美羽ちゃんも頑張って』


『はい。一度寝て、起きたら買い物に行きます』


『そっか。そっちで生活するのだから買い物しないとね。折戸さんと行くの?』


『いえ、隣の部屋に住んでいるキャルさんと一緒に行くつもりですが、折戸さんとも一緒に行くかもしれないです』


『よかった。それなら安心。折戸さんが一緒なら俺も安心だよ。……あ、そ……そろそろ行かないと』


 電波の調子が悪いのか、音が途切れそうになり、そんな中でも駅のホームで聞こえるアナウンスが微かに聞こえてきてくる。毎日聞いていた時は何とも思わなかったのに、離れると懐かしさを感じる。


『いってらっしゃい。気を付けてくださいね』


 一緒に会社に通っていた時と同じ言葉を口にする私がいる。離れていても私の気持ちは全く変わらない。


『うん。美羽ちゃんもゆっくり眠ってね。朝起きた時にメールをと思ってメールしたけど、思いがけず声が聴けて嬉しかった。仕事が頑張れそうだ。じゃあね』


『はい』


『美羽。好きだよ』

 電車のホームに入ってくる音とともに電話は切れたけど、最後の小林さんの言葉で顔を真っ赤に染めた私はッベッドの上に正座したままだった。電話をかけなおすわけにも行かず、小林さんの甘い声を耳に残したまま、私はベッドにポスンと横になった。


「早く寝ないと明日起きれないのに、小林さんったら…』

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