あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 折戸さんならいくらでも一緒に食事に行く人はいるだろう。一人で入れなくても、他に一緒に行く人はいるはず。でも、私は折戸さんの言葉に素直に頷いた。


『二日目の夜。少し慣れて寂しくならないため』


 それが折戸さんの優しさだった。


 実際に連れて行かれた店は一人でも入れるような雰囲気の店で、私と同じような女の人が一人で食事をしている。男の人が一人で食事をしている人は居ないけど、でも、一人で入れない雰囲気はない。もっと遅くなると一人でくる男の人も居そうだ。


 そんな店に二人で向かい合って食事をした。


 折戸さんはしきりに言っていたけど、この店を私に教えたかったのが分かる。デートと言ったのも、一人で食事をするのもと言ったのも、少しはあるかもしれないけど、私のこれからの生活のためだというのは分かった。


 女の人が一人で入れる店というのはとっても大事で、しばらく慣れない生活の中でいつもキャルさんと一緒のわけがない私が一人でもいける店はやはり必要で、この店はアパルトマンからも近いし、値段もお手頃。野菜も多いし、何よりも味がいい。


 ここはそのための場所。


「ここに連れてきてくれてありがとうございます」


「俺が来たかっただけ。ここのキッシュが大好物なんだ。会社帰りに持ち帰りもするんだ」


 確かに生クリームを使って作られたほうれん草とベーコンのキッシュは中のマッシュルームの歯触りが絶妙でいくつも食べられそう。
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