あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「私も好きです」


「それならよかった。美羽ちゃんも仕事が遅くなった時は買って帰るといいよ。さ、そろそろ出ようか。本当に部屋に帰ってゆっくりとしないと」


「そうですね。荷物も片付けないといけないし」

「そうだね。でも、時間はあるから無理はしないで」

「はい」

「じゃ、アパルトマンまで送るよ」


 食事が終わると、真っ直ぐにアパルトマンへの道を歩く。さっきの店でも折戸さんは転居祝いだと言ってご馳走してくれた。


 今日も月がとっても綺麗で、月の光を受けた私と折戸さんの影が長く煉瓦の道に描かれていた。


「明日は初めての研究所への出勤だよね。緊張している?」


「してますよ。だって、初めての出勤ですから。きちんと挨拶できるか心配です。フランス語の発音は難しくて」


 研究は出来たとしても、コミュニケーションを取ることが出来るという保証はない。特に語彙の違いからもしかしたら行き違いがあるかもしれないと心配もある。


「美羽ちゃんなら大丈夫。きっといい仕事が出来るよ」


 大丈夫という言葉はどうしてこんなに優しいのだろう。折戸さんの優しさが滲み出る言葉に私は少しだけ緊張が緩む。認めてもらうことがこんなにも心を穏やかにしてくれた。


「ありがとうございます。少しだけ気が楽になりました。明日から頑張れます」


「美羽ちゃんなら。大丈夫。蒼空も同じことを言うと思う」


「え?」

< 307 / 498 >

この作品をシェア

pagetop