あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 折戸さんと別れて自分の部屋に入ると、そこには殺風景な部屋があった。


 淡いペールブルーの壁紙に床は無垢材。備え付けの家具は全部シャビーな感じのオフホワイトで統一されてあった。テーブル、ソファ、テレビ台、机がリビングにあり、奥の寝室にはベッドとチェスト、本棚に使えそうな飾り棚に、クローゼットとパーテーション。


 日本で言ったら1LDKの部屋でリビングの奥が寝室となっている。それにユニットバスがついたタイプの一人暮らし用の部屋だった。少し広めのリビングは日本で私が住んでいた部屋よりもかなり広い。奥の寝室も広い。一人で住むには十分な空間でだった。十分な空間に、荷物が殆どないのだから、余計に殺風景に見える。


 同じ造りのキャルさんの部屋はたくさんの物に囲まれていたから、殺風景には感じなかったし、ワインに酔っていたから、昨日はこの部屋もそんな風には感じなかった。そして、今日は昼からさっきまで折戸さんと出掛けていたから、こうやって一人になったのは初めてだった。


『何を甘えているの?』

 自分で自分に言い聞かせ、コツンと自分の頭を軽く叩く。


 寝室に置いてあるスーツケースから部屋着を出すと、それに着替え、私はフッと息を吐く。そんな息も大きく聞こえる。荷物の片づけは時間を掛けてゆっくりとすることにしようと思っている。今の自分に出来ることを黙々としていた方が楽だと思ったのだった。


 静かに時計の音だけが響いていた。

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