あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「そんなに心配そうな顔をしないでも大丈夫。ここから研究所はそんなに時間も掛からないし、所長は優しい人だしね。それよりも美羽は皆の前での自己紹介のスピーチは考えたの?そんなに堅苦しく考えるものでもないけど、フランス語での挨拶になるからね」


 キャルさんの言葉は的を得ていて、私はこの件に関しては日本に居る時から実は必死に考えていた。一応、髪には纏めてきたけど、それを読むわけにはいかないので、自分の記憶が勝負な部分もある。内容もだけど、発音も微妙。いくら勉強をしていたとはいえ、所詮は自己学習の域を抜けてはない。


「挨拶しか出来ないよ。でも、それでいいよね」


「挨拶と自分の名前が言えたら上等よ。一応、交換留学とは言っているから、会話はこれからでしょ」


「キャルが日本語話せて助かる」

「何でも聞いて、さ、そろそろ行きましょうか。所長も待っていると思うし」


「所長さんってどんな人?」


 今から一緒に働く研究所の雰囲気は昨日、キャルさんから聞いたけど、所長のことを私は何も聞いてなかった。日系企業の研究所の所長というのはどんな人なんだろう。


「研究バカ」

「え?」

「だから、研究バカな人。人には興味がなくて研究ばかり。でも、すごく才能はある人。そんな人だから、色々な雑務は副所長がしているの。これから困ったことがあったとしても所長に言っても無駄よ。言うなら副所長」


「副所長はどんな人?」


「ママンみたいな人よ。優しくて思いやりがあって…私たちの味方。絶対の味方な人」
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