あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 焼き鳥とビール。


 これは切っても切り離せない関係にあると思う。あんまり飲まない私はともかく小林さんは飲まない状態での焼き鳥は辛いだろう。それなら、もっと他の物がいいのではないかとさえ思う。でも、あまり外食しない私は何も思い浮かばない。それに、このマンションの近くにどんな店があるのかさえ知らない。でも、小林さんが焼き鳥というからにはどこか目を付けている場所があるのかもしれない。


「今日は我慢する。ビールは部屋に帰ってから飲むから大丈夫」


「車はうちのマンションの近くの駐車場に置いていきませんか?そして、今日は私の部屋に泊まって、明日の朝早くに車で帰ったら仕事は間に合いますよね。それなら小林さんもビール飲めます」


「え…。あの。俺が美羽ちゃんの部屋に泊まっていいの?」


 小林さんは目を丸くして私を見つめる。私はその小林さんの表情で自分言った意味に気付いてしまった。自分の部屋に誘うっていうことはそういうことで、恋人を部屋に誘うという意味は…二度目を意味している?


 小林さんが目を丸くして固まるのも当然で、私は顔が真っ赤になるのを感じた。耳まで熱くなる。


 時間を巻き戻したいと思った。
 

 恥ずかしくてそこに穴があったら入りたい気分になった。そんな私に小林さんはニッコリと笑い掛けてくれるのだった。

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