あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 折戸さんがフランス支社にいるというのもあるかもしれないが、こんなに主任でありながら話題に上がるの珍しい。でも、二年連続社長賞の栄誉を受ける高見主任なら納得すると思う。でも、なんでここに高見主任がいるのだろう。昨日の小林さんのメールには本社営業一課に行くと書いてあったばかりだった。

 そんな忙しい時期は忙しく海外に来ている暇は無いのにと思うのに、この場所にいる。


 部屋に入ってきた私に気付いた高見主任は書類から私の方に視線を投げる。真剣で隙のない表情をフッと緩め、私のよく知っている優しく穏やかな微笑みを浮かべた。私も顔が一瞬緩むものの、高見主任の視線の前では姿勢がスッと伸びるのを感じた。尊敬する上司には今も変わらない。あの時より格段に威厳を増していた。


「お久しぶりです。高見主任。どうしてこちらに?」


「そんなところに立ってないで座って」


 高見主任に促され、私が前に座ると、手に持っている書類を閉じる。それは私の研究している内容のレポートで、先日所長に途中報告として出したもので、まだ完全ではないけど今の経過を書き込んだものだった。まだ未完成ではあるけど、あんなに真剣に見て貰えると、現場としての意見を聞きたくなる


「久しぶりだね。坂上さん。フランスにはイギリスの方で取引があって、そのついでにこちらにもきてみた。と言ってもすぐに日本に帰らないといけないんだけど、折戸に用事もあったので、フランス支社に行って来たら、研究所の方で新しい研究が始まっていると聞いたから、坂上さんにも会いたかったし、寄らしてもらった」

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