あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 本社で一緒に仕事をしていた時から時間は過ぎているのに、未だに高見主任は私に気を配ってくれていた。この心遣いが厳しさの中に優しさと感じるのだろう。仕事、数字に関しては鬼のように厳しい。実際に一度でも高見主任と一緒に働いたならば、きっと、仕事に対する見解も変わってしまうだろう。最後の最後まで諦めない強さを持った人。でも、その反面でこんな風に少しの期間しか一緒に仕事をしていない私の事も気に掛けてくれる。


 だから皆に慕われるし、憧れの存在にもなるのだろう。イギリスに行ったついでとはいうけど、ついでというのは距離もあるし、時間も掛かる。ヨーロッパに来たついでといえばそうかもしれないけど…。


「ありがとうございます。こちらでは研究所の人も優しい人が多いので、楽しく仕事をさせて貰ってます。レポートを読んだのですか?まだ途中の経過報告なんです。キチンとした形での報告はまだ時間が掛かると思います」


 フランスには仕事では来てないのに、研究所に来たついでとはいえ、レポートに目を通すなんて高見主任らしい。フランスは観光する場所はいくらでもあるのに、空港からそのままフランス支社と研究所に来たのだろう。


「まだじっくりとは読んでないが、サラッとだけは読ませて貰った。研究としての最終的な結果は出てないみたいだけど、難しい研究と聞いていたから思っていたよりも進んでいたので驚いた。この分なら、期限までには上々の成果を見込めそうだし、坂上さんのキャリアにもなる。どうなることかと思ったが、坂上さんはフランスに来て正解だったようだね。一段と冴えているように見えるよ。」
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