あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「少し安心した。折戸の事もあるが、坂上さんがこっちでどうしているのかも気にはなっていた。でも、このレポートを見て安心した。坂上さんらしさがある」


「ありがとうございます」


 高見主任が折戸さんが日本に帰国しないといけない現実を私に教えたのは、折戸さんが自分では中々言い出せないのを見越してのことかもしれない。辞令が出れば、否応なしに企業の一員として、折戸さんは帰国する。それは決定なのだと思う。


「あの、聞いてもいいですか?答えられなかったらいいですが」

「ん?なんだ?」


「折戸さんに辞令が出るのはいつの予定なんでしょうか?」


「まだ折戸の正式な決定は出てないが、私の課長就任の辞令が今月末なので、同時になるか、来月になるか。決まり次第帰国になる」


 今月末って…。もう時間はない。海外からの転勤だから私の時のように二週間から一か月くらいの引っ越しに要する準備の時間はあるだろうけど、遅くても来月の末には折戸さんはここから居なくなる。フランスに来てから心のどこかで折戸さんに頼っていた部分がある。困ったときは何度も助けて貰った。


 でも、もう、一緒に過ごす時間は残されていない。


「そうなんですね。思ったよりも早いです」


「会社の組織というのはそんなものだと思う。今日の夜に折戸と一緒に食事をする予定になっている。坂上さんも一緒にどうかな?」


「私もいいんですか?ご迷惑になりませんか?」


 折戸さんと高見主任はお互いに大事な話があるかもしれないから、遠慮するべきかもしれない。そんな思いで高見主任を見上げると、少しだけ顔を緩めていた。
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