あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 高見主任との食事が終わったのはそれからしばらくしてからだった。


「ご馳走様でした。久しぶりに贅沢をさせて貰いました」


 折戸さんの言うとおり、今日の食事は高見主任が払ってくれた。私がバッグから財布を取り出し、支払おうとすると、高見主任はそっとその手を遮る。


「折戸ならともかく坂上さんに払わせるつもりはない」


「ご馳走様でした」


「たまにだからな。さ、俺はホテルにそろそろ帰ることにする。折戸と坂上さんはどうする?タクシーでも呼ぶか?」


 高見主任の宿泊するホテルと私たちの住んでいるアパルトマンは反対方向。駅までは一緒にと思ったけど、高見主任はここからホテルまでタクシーの乗ることのことだった。


「まだ時間もあるので地下鉄で帰ります。美羽ちゃんも送りますから安心してください」


「そうか、じゃ、折戸に坂上さん。また」


 そう言うと呼んであったタクシーに乗り込むと高見主任は行ってしまった。そのタクシーの後ろ姿を見ながら、折戸さんは「俺たちも帰ろうか」と言ったのだった。


 店から駅までは少し歩いたところにあり、そこから地下鉄に乗ってすぐに私の住むアパルトマンのある駅に着く。勿論、隣に住んでいるのだから、折戸さんの帰り道も一緒。並んで歩いていても考えてしまうのは『折戸さんの日本帰国』のことだった。


「美羽ちゃん」


 考え事をしていて、ぼーっとしている私を折戸さんは顔を覗き込む。いきなり綺麗な顔が目の前に現れたので吃驚して後ずさりすると、不意に折戸さんの腕がサッと私の背中に回されグッと、引かれた。フワッと身体が浮き、一歩だけ折戸さんの方に身体が揺れた。


「え?」


「後ろの人が…。」
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