あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 電話を切ると同時にキャルが私の顔を覗き込んできた。私が折戸さんの声で内容がわかったように、キャルも私の声を聞いて、何か起きたのだと察したのだろう。見透かしたような笑顔から顔を逸らしてパソコンの画面に視線を送り、キャルの視線から逃れることに一瞬だけ成功した。


 本当に一瞬だけ。


「翔とデート?違うか。決着?これも違う。うーん。日本語って本当に難しいわ」


「一緒に食事に行くだけ」


 私がそういうと、キャルは立ち上がり、私の横の椅子に座った。そして、綺麗な瞳を私の方に向ける。結わえていた髪からゴムを抜くとサラリと髪を靡かせた。


「美羽に聞いてみたかったことがあるの。日本にいる彼氏ってそんな素敵なの?翔もかなり素敵な男だと思うのよ。美羽のことをあんなに大事にしているし。翔じゃだめなの?仕事も出来るし、優しいし、いい男だと思う」


 こんなことを言ったことのないキャルの言葉にドキッとしてしまった。確かに折戸さんは素敵だと思う。大事にもしてもらったし、とっても思いやりがあり、私も大好きな人。でも好きの意味が違う。小林さんのことを思うと、私の心はキュッとなって…。泣きそうになるほどの愛しさが込み上げる。こんな思いをさせるのは小林さんしかいない。


「日本にいる彼は私が一番好きな人で誰よりも幸せになって貰いたいと思っている人なの。彼が私と一緒に居たいと少しでも思ってくれているうちは私は他の人を好きになることは出来ないと思う」


 一年以上も離れた今も、私は小林さんに恋をし続けている。他に素敵は人が目の前に現れたとしても…。私の気持ちは変わらない。
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