あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「自分の幸せよりも相手の幸せを考えられたら、それは本物ね。美羽の彼に会ってみたいわ。あの翔よりも素敵な人なんてそうはいないと思うから。フィアンセが居なかったらもしかしたら私が迫っていたかも」

「フィアンセって結婚が決まったの?」


「ええ。少し前に会った時にそれらしいことを言われたんだけど、私も本気なのか、その場の気持ちの高まりなのか分からなかったから、美羽には言えなかったけど、一週間くらい前に正式にプロポーズされた」


「おめでとう。よかったわね。キャルが大好きな人と一緒になれるなんて嬉しいわ。」


「でも、おめでたいばかりじゃないの。結婚すると、彼の仕事の関係でこの研究所を辞めることになると思う。新しく一緒に住むところからこの研究所は遠すぎて通えないから」


 キーボードの上を踊っていた指が止まる。そして、見上げるとキャルが私を見つめていた。その顔には寂しさが滲んでいる。


「辞めるの?」


「ええ。そうなると思う」


「それっていつくらいなの?」


「…二か月後。」


 他の研究所の所員ともそれなりの交流はしているけど、キャルのように日本語の堪能な研究員は居ない。心から私のことを分かってくれる人はいなくなる。そう思うと怖くて仕方ない。


 折戸さんが日本に帰国。キャルが結婚後退職。


 これが私の目の前に一気に降り注いできた現実だった。
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