あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「俺は生ビールだけど、美羽ちゃんは?」


 そう聞かれてちょっとだけ悩む。この頃の疲れを考えると生ビールで一気に酔う可能性もある。でも、仕事も頑張ったし、今日はフランス留学も断ったし、私の中では小林さんとこれからも一緒に居れることが決まった日だから少しだけお祝いしたい気にもなった。それに、ここは私のマンションのすぐ裏から少し歩いたところにあるから、例え酔ってしまったとしても、自分の部屋には帰りつくことが出来る。


「私も一緒でお願いします」


 テーブルに置かれた琥珀色の液体にキメ細かな泡が美味しそう。ジョッキにはうっすらと汗を掻いているように白んでいる。キンキンに冷やされたジョッキに入れられた生ビールはこの上なく美味しそうだ。それにしても、私は小林さんと一緒に飲むことが増えてから確実にアルコールに強くなっていると思う。


 前よりも美味しく飲めることが増えた。


「料理の注文は後から伺います」

 
 そういって男の子はカウンターの向こうに戻っていった。戻っても次のビールを注いでいるから忙しいのだろう。狭い店だからか、あちこちでビールの注文が飛び交っている。


「とりあえず乾杯しよ。美羽ちゃん、お疲れ様」


「お疲れ様です」



 しばらくしてバイトの男の子に頼んだ小林さんの料理の注文は軽く四人分はあり、今日も小林さんの食欲は全開だった。小林さんはジョッキに入った生ビールをドンドン飲み干していく。料理も綺麗さっぱりと消してしまっても、全く変わらない。それに比べて私は少しのビールで身体が熱くなり、フワッと身体がしてくる。

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