あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「そろそろ帰ろうか」
「はい」
店を出ると、やっぱり食事代は払わせて貰えなくて、それなら、俺に奢ってとガス入りの水を強請られた。それを折戸さんに渡すと、すぐにその場で開けて口を付けた。炭酸の弾ける音が聞こえると、折戸さんはさっきよりももっといい笑顔を向ける。
「酔っているからかもしれないけど最高に美味しい。まさに命の水って感じ?」
「見た目は全然酔っているようには見えませんが、折戸さんから『命の水』とかを聞くと酔っているかと思います」
「俺が酔って動けなくなったら、美羽ちゃんが俺をお姫様抱っこしてくれる?」
「無理です。私も酔ってますから」
「美羽ちゃんも酔っているようには全く見えないよ。残念だけど、自分の足で歩くかな」
そう言って私を見つめる瞳は無邪気さに輝き、私をドキドキさせる。端正でオトナな雰囲気を纏うのに、今日は少しだけ少年のようにさえ見えた。折戸さんがフランスでの時間はきっと殆ど残ってないだろう。正式に発表されたら、私の時と同じなら二週間くらいの間で引っ越しを終わらせないといけない。
引っ越しが終わったら…寂しくなる。
そんなことを思うと、少しだけ瞳が涙で潤んでるのに、折戸さんは何も言わなかった。
「折戸さん。月がとっても綺麗ですね」
「本当に綺麗だ」
誤魔化すかのように零した言葉に折戸さんは涼やかな声を響かせた。その声がいつも以上に優しく感じてしまい、もっと泣きたくなったけど、私は泣かなかった。涙は目の端で止まっていた。
折戸さんの正式な日本への帰国。本社営業一課主任としての赴任の辞令が出たのはそれからすぐの事だった。
「はい」
店を出ると、やっぱり食事代は払わせて貰えなくて、それなら、俺に奢ってとガス入りの水を強請られた。それを折戸さんに渡すと、すぐにその場で開けて口を付けた。炭酸の弾ける音が聞こえると、折戸さんはさっきよりももっといい笑顔を向ける。
「酔っているからかもしれないけど最高に美味しい。まさに命の水って感じ?」
「見た目は全然酔っているようには見えませんが、折戸さんから『命の水』とかを聞くと酔っているかと思います」
「俺が酔って動けなくなったら、美羽ちゃんが俺をお姫様抱っこしてくれる?」
「無理です。私も酔ってますから」
「美羽ちゃんも酔っているようには全く見えないよ。残念だけど、自分の足で歩くかな」
そう言って私を見つめる瞳は無邪気さに輝き、私をドキドキさせる。端正でオトナな雰囲気を纏うのに、今日は少しだけ少年のようにさえ見えた。折戸さんがフランスでの時間はきっと殆ど残ってないだろう。正式に発表されたら、私の時と同じなら二週間くらいの間で引っ越しを終わらせないといけない。
引っ越しが終わったら…寂しくなる。
そんなことを思うと、少しだけ瞳が涙で潤んでるのに、折戸さんは何も言わなかった。
「折戸さん。月がとっても綺麗ですね」
「本当に綺麗だ」
誤魔化すかのように零した言葉に折戸さんは涼やかな声を響かせた。その声がいつも以上に優しく感じてしまい、もっと泣きたくなったけど、私は泣かなかった。涙は目の端で止まっていた。
折戸さんの正式な日本への帰国。本社営業一課主任としての赴任の辞令が出たのはそれからすぐの事だった。