あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 また、いつもの自問自答を繰り返す。


 小林さんとの時間は流れるのが早すぎる。


 この店に入ってどのくらいの時間が過ぎたのだろうか。騒がしかった店内は次第に穏やかさを感じさせるようになっていた。満席だったのに、今では空席も少し目立ちだしている。

 
 そんな中、私と小林さんはまだ最初に座ったテーブルに居て、そこには料理が入っていたはずの空の皿が並んでいる。小林さんはビールを飲むスピードも緩められ、お腹もいっぱいになったのか今は話をしているだけ。



「でさ、この間、高見主任がメールを送ってきて…。結構な無茶振りでさ、頭を抱えたよ」


「その内容って小林さんの限界ギリギリだったりします?」


「よくわかるね。あの人絶対に人の限界を見つけるのの天才だよ」


 さすがにまだ閉店と言う時間ではないと思うけど、二人で話しながらの時間はとっても楽しい。残念なのは仕事の話ばかりでちっともプライベートのことにならないことだった。でも、それが私と小林さんらしいとも思う。同僚から始まっているから、やっぱり私と小林さんの間には仕事が切り離せない。


 でも、それがいいのかもしれない。



 この間の夜みたいに色香を纏った小林さんは今の私には刺激が強い。明るい陽だまりのような小林さんの傍に居たいと思うし、仕事の話をしている小林さんも好きだと思う。素敵だなって思っていると急に小林さんから現実に戻る声が聞こえた。



「もうそろそろ帰らないといけないね。さすがにもう閉店だよ」


「何時になってます?」


「十二時を過ぎたところかな?」

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