あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 私の横には一ヶ月前に日本に帰国したばかりの折戸さんが座っている。そして、私を見つめる涼やかな微笑みにドキッとしてしまう。帰国してから、一か月の時しか経ってないのに、折戸さんがフランスにいる。


 キャルの友達ではあるけど、日本に帰国したばかりの折戸さんが渡仏してくると誰が思うだろう。でも、折戸さんはここにいて、髪を綺麗に整え、フォーマルなスーツを身に纏っていて、驚きの余りに見つめる私に優しく微笑み掛ける。


「美羽ちゃん。久しぶりだね。元気にしてた?」


「なん…」


 私が口を開こうとすると、パイプオルガンの音が静かな教会の中に流れ出す。その妙なる音に耳を傾けると、ドアが開き、純白のウェディングドレスを纏ったキャルが入場してきた。さっき、控室で見た時よりも神妙な表情のキャルを見ると、緊張しているのが分かる。ベール越しだけどキャルの顔が私にはよく見えた。


「話は後からにしよう。式が始まる」


 パイプオルガンの音に合わせて、ゆっくりとキャルとキャルのお父さんは歩を進める。いつもはジーンズにシャツだったのだから、女らしい格好も見たことの無いキャルだけど、今日は綺麗に化粧を施し、髪も結いあげてある。白いベールの下には緊張しながらも真っ直ぐに前を見つめる瞳がある。彼に向かって歩く姿がキャルらしいと思ってしまった。


 神父様の前で、父親の手を離れ、彼の手に沿えると二人で祭壇の前に立った。そして、神父様の声によって厳かな式が始まった。神父様の柔らかで優しい声に、キャルもキャルの旦那様も静かに返事をする。そんな姿を見ながら私は教会の一番後ろの席でキャルの幸せを心から願うしか出来なかった。
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