あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「休みが取れなかったですか?」


「美羽ちゃんも知っていると思うけど、本社営業一課、いや、高見課長の下で働くということはどれだけ過酷か分かるよね。俺としてはフランスでゆっくり仕事するほうが好きなんだけど、高見課長はそんな甘いことを許してくれる人じゃないし。というわけで俺は明日の朝の便で日本に帰るんだよ」

 
 そう言って折戸さんはクスクスと笑う。


『フランスまで来て一泊二日』


 普通ならないだろうけど、キャルの結婚式ということでやってくるのは折戸さんらしい。本社営業一課の主任になった折戸さんは前のように自由に動くことは出来ないのは分かる気がした。話しながら歩いていると私のアパルトマンが見えてきて、その先には折戸さんの泊まるホテルが見えている。


「少し飲まない?いつもの店で」


誘ってきたのは折戸さんの方だった。明日のことを考えると帰ってホテルで寝たほうがいいと思う。でも、折戸さんはいつものように穏やかに笑う。


「でも、明日、早いですよね」


「うん。でも、飲みたい気分。しばらくフランスには来ることが出来ないから、久しぶりにこっちのワインと料理も楽しみたい」


 向ったのはキャルと折戸さんと私で何度も通った店で気取らない雰囲気が三人とも気に入っていた。美味しいのにお財布に優しくリーズナブル。それもあってたくさんの人で溢れている人気店だった。


「私も久しぶりです」

 

 久しぶりの店。向かいに座るのは久しぶりの折戸さん。たった一か月くらい前のことなのに、懐かしく感じてしまう。折戸さんはワインリストを見ながら選んだのは私がとっても好きなワインでだった。日本にいるときは殆ど飲むことのなかった私はフランスに来て、ワインの味を少し覚えていた。
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