あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「心配してくれた?」


 折戸さんはクスクス笑いながらワイングラスを傾ける。その姿を見ていると余りにも自然でまだ折戸さんがいつまでもフランスに居るように感じた。でも、そんな甘えを見せる訳にはいかない。


「あんまり心配もしてなかったです」


「酷いな。俺もきちんと心配して欲しいよ」


「キャルの酒癖の悪さよりは心配してないです。キャルもだけど、折戸さんがいてくれたから私は今まで楽しく仕事も出来なかったと思います」


「改まって言われると恥ずかしいな。美羽ちゃんが自分で頑張ったからだとは思うけど、でも、その手伝いを少しでも出来たのなら俺も嬉しいよ。本社営業一課では美羽ちゃんにかなり助けられたからおあいこだね」


「私にはノルマなかったですから」


 私が本社で営業の人について行ったのはそれが仕事だったからであって、かなり助けられたというのは言い過ぎ。実際に私が居なくても十分な成績を残していけたとは思う。


「実際に美羽ちゃんの数字としては上がってないかもしれないけど、あの時の本社営業一課の成績はかなり凄くて、上層部では本気で研究所から派遣して貰うという制度を確立しようかとの動きもあった」


「そうなんですか?」


「ああ。でも、それは立ち消えになったけど。本社営業一課の人を唸らせるほどの知識を持った研究員が少ないということと、もしいたとしても、その人材を本社営業課に派遣するのを研究所が拒んだことが原因だよ」


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