あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 小林さんの言うとおりだった。私はこの話が出た時に誰よりも先に小林さんに話をしないといけなかったのだろう。でも、私は小林さんの反応が怖かった。


『何で知っているんですか?』


『実は美羽ちゃんが多分、所長から言われたのと同じくらいの時期から知っていたよ。フランス支社との取引の際にキャルさんが辞めた後のポストに美羽ちゃんの名前が挙がっているって。俺、ずっと美羽ちゃんから言ってくれるのを待ってた。でも、待てなくなったから自分から聞いた』


『ごめんなさい。自分の気持ちが整理できなくて』


『俺が待てないから別れるというとでも思ったの?』


『違います。小林さんなら私が望めば応援してくれると思ってました』


『なら、何で?』


『仕事の面で考えるとキャルとの最後の研究は今のままでは中途半端な状況で日本に帰らないといけないことになりそうです。最後まで自分で終わらせたいと思う気持ちと、今でも小林さんと離れているのも限界なのに、これに一年追加なんて自分で決めれなかった』


 受話器の向こうで小林さんが息を呑むのが聞こえた。そして続く沈黙に私は心臓が張り裂けそうなほどの痛みを感じた。


『今まで頑張ってきたんだから、もう一年頑張っておいで。俺は美羽が思う存分研究をして戻ってくるまで待っている。でも、フランスへの正式な移籍はダメだ』

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