あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 一か月もすると次第に自分の研究を終らせた研究員が集まってきて、研究の本格化にむけて動き出す。本格的に動き始め、もう後戻りは出来ないと思った時に少しだけ後悔した。自分の選択が正しかったのかわからない。研究チームでの仕事をしていると、この研究は私でなくてもよかったのではないかと思ったりもした。


「美羽。ちょっといい?」


 会議室を出た私はチーフに呼ばれ、足を止めた。


「なんでしょう?」


「これから研究は進むけど、本当に大丈夫なのか?所長から聞いた時は嬉しくもあり、心配もした」


「大丈夫です」


「それならいい。正直、今は人員不足だから、美羽がフランスに居てくれるだけで本当に助かる。それにこれからの研究も頑張って貰いたい」


「はい。頑張ります」


 チーフに頭を下げてから、自分の部屋に戻ると、少し疲れを感じた。マグカップにコーヒーを注ぎ、いつもより多めの砂糖とミルクを入れると、私はソファに座り、マグカップに口を付けた。



 チーフには大丈夫と言ったけど、本当に大丈夫なのかと自分に言い聞かせた。キャルと私が研究をある程度成果を出してから半年が過ぎている。残された時間は半年と延長した一年。


 折戸さんもキャルも居ないフランスでの生活は研究室で過ごすだけの無機質なものになっている。キャルたちが居てくれた時と、今とでは全然違う。



 ちょうどその時のことだった。


 せわしげなノックの後に、私が返事をする前に急にドアが開き、スーツを着込み、手にはアタッシュケースを提げた男の人が入ってきた。

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