あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「そろそろお時間になります。新郎様は既に神父様の前にて新婦様をお待ちになっています。教会の入り口にお父様がお待ちですのでそちらに参ります。ブーケはその場でお持ちになって貰いますので、ドレスの裾を踏まないように係の手を持ってからゆっくりと歩かれてください」


 手を借りて立ち上がると、軽く化粧を直してから頭にチュールレースで出来たベールをゆっくりと垂らす。そして、ゆっくりと手を引かれて控室を出ると、教会の入り口に向かって歩く。


 私は緊張してきた。ドキドキが止まらない。慣れないヒールで転びそう。


 よろよろしながら歩く私はどうにか教会の玄関のドアの前に来ることが出来た。そこにはお父さんが立っていて、ドレス姿の私を目を細めてみていた。


「美羽。綺麗だよ」


 名前を呼ばれたその先にはお父さんが立っていて、私と同じかそれ以上に緊張しているように見える。着なれないスーツだけど、今日のお父さんはとっても素敵に見えるのは何故だろう。


「お父さん。今まで本当にありがとうございました。」


「小林くんと一緒に幸せになりなさい。何があっても一緒に頑張れば大丈夫。でも、結婚をしても美羽は私の大事な娘だから、困ったことがあれば何でも言ってきなさい」


「ありがとう。お父さん」


 お父さんの手に自分の手を重ねると手袋越しなのに温もりが伝わってきた。私は今日からこの温かい手を離れて、一番好きな人の手を取る。



 結婚式が始まる。

 私の最後の恋が始まる瞬間だと思った。
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