あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 私のマンションの近くにはコンビニがある。ここは一人暮らしの人も多いから、夜中でも惣菜コーナーは充実している。欲しいものは全部買えるだろう。私はサラリと見て回って、小さなお弁当を一つ買うことにした。小林さんもお弁当とおにぎりとを買っている。


 そのおにぎりは三つで、小林さんの好きなおにぎりランキングの上位三つらしい。最初は弁当売り場ではなくておにぎりの並ぶ棚をずっと見つめていたので、さっきの『おにぎり全種類制覇』を本気でするのではないかと思ってしまった。


「さっき、棚を見ていたから本当に『おにぎり全種類制覇』を本気でするのかと思いました」


「マジでしようかと思ったけど、美羽ちゃんの部屋でそんな馬鹿なことをするのもどうかと思って。でも、好きなおにぎりは買ったよ。美羽ちゃんはそれだけでいいの?」


 私の手にあるお弁当は小林さんの買う予定のお弁当よりもかなり小さかった。それでも私にはちょうどいいと思う。研究所を出た時、空腹だったけど、今はそれを通り越してしまい、あんまり食べられそうな気がしない。


「はい。これで十分です」


「他に買うものが無かったら帰ろうか」

「はい」 


 コンビニからマンションへの帰り道。小林さんの左手は私の右手をキュッと握っていた。手から感じる小林さんの温もりを感じながら私は幸せを噛み締めていた。一緒に手を繋いで歩くということがこんなにも私の心を温かくする。マンションに着くと、ふと小林さんは足を止めた。そして、マンションの玄関を見つめ、静かに響く声が私の耳を侵す。


「美羽ちゃん。ワン切りしなくていいの?」


「して欲しいですか?」


「そんなわけないよ」


「なら聞かないでください」

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