俺様御曹司と蜜恋契約

 「責任とれよ」





週が明けた月曜日。

午前の仕事を終えた私はいつものように持田さんと休憩室で昼食をとっていた。

今日のお弁当は三色そぼろ丼。味付けした鶏ひき肉とほうれん草と卵をご飯の上に乗せただけのシンプルなもの。私は小さい頃からこのそぼろ丼が大好きで今でも週に1度はお弁当にして持ってきている。

一方の持田さんは今日もコンビのサラダだけ。それにドレッシングをかけながら持田さんが口を開く。

「広まってるわね。花と葉山社長とのこと」

「ですね…」

休憩室には他の女性社員たちもいてさっきから私を見てコソコソと話声が聞こえてくる。

「それで、本当に付き合ってるの?」

「……付き合っていません」

お弁当の蓋を開けながら私は持田さんの言葉に首を横に振った。

「でも花がいないときに葉山社長が付き合ってるってみんなの前で言ってたわよ?」

「それは……」

商店街の再開発をやめてもらう代わりに葉山社長と付き合う。そういう取引をしているだけで本当に付き合っているわけじゃない。でもそのことを持田さんには知られたくないから話すわけにはいかなくて。

そもそもどうして葉山社長はみんなの前で私のことを彼女だなんて言ったんだろう。あの取引は私たち2人の間だけのものだと思っていたのに…。

本当に付き合っているわけじゃないのに『付き合っている』なんて私には言えない。

「葉山社長とは付き合っていません」

「じゃあどうして葉山社長が花のことを彼女っていうの?」

「それは…」

「一緒に食事に行く関係なのはどうして?」

「えっと……いろいろあって」

「いろいろ?」

「すみません。話せません」

ごめんなさい、と呟く私を見て持田さんが小さく息を吐く。

「つまり何か事情があるってことね」

持田さんのその言葉に私は黙って頷いた。
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