専務と心中!
「えーとー……統さんの子供って可能性は……」

ドキドキする。

聡くんは、顔をしかめた。

「ないない。そんな関係じゃなかったよ。とっくに。」

……そう。

ちょっとホッとした。
いや、疑ってたわけじゃないけどね。
何となく、ね。

「そっかあ。……でも、ホッとした。お一人じゃないのね、マダム。お腹の子のお父さんと、今度こそ幸せにならはるといいねえ。」

私がそう言うと、聡くんは目を見開いた。

「……におさんって……父と同じぐらい、イイヒト~。」

今のは、誉められたというより、呆れられたような気がする。

「いや、さすがに統さんほどでは……」
「そう?むしろ、父よりまっすぐだよ。……普通はさ、母の不貞を責めて、分与した財産の返還を要求するレベルなのに。」

聡くんは、苦笑していた。

「まあ、でも、ありがとう。たぶん夏には出産だろうから。」
「え。そうなんだ。早いね。……てか、聡くん、大変な時に行くことになるのね。大丈夫?」

そう聞いたら、聡くんは肩をすくめた。

「でも、たぶん、母の肉親、僕だけだから。あの母が、妹だか弟だかを、ちゃんと育てられるのか……兄として、放置できないよ。」

あー。
そうか。

「……そう。私は部外者だろうけど……それでも、私にとって聡くんは大事な家族だから……何でも相談してね。」

何て言えば伝わるのだろう。
確かに、マダムが産む子は私とも統さんとも無関係だけど……聡くんにとっては大切な弟妹で……このお腹の子と同じ存在。

みんなが幸せになってほしい。
綺麗事じゃなくて、本気で私はそう思ってる。

「一緒に幸せになろう。」

そう言って、聡くんの手を取って、ほぼ無理矢理、ぶんぶんと手を振った。

聡くんは、つないだ手をじっと見て、それからうつむいた。

照れちゃった?

「……僕は男子校だし、母はあんなヒトだから……女子は苦手なんだけど……」
聡くんが小声でつぶやくように、でもハッキリ言った。

「におさんは好きです。」

おおっ!
一瞬、告白されたのかと身構えた。

図々しいな、私。

「……それはどうも……ありがとぅ……。」

言われた私も、言った聡くんも、照れまくって変な空気になっちゃったけど……くすぐったいというか……うれしかった。
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