COLORS





4th 後藤ゆり





真冬の朝は、黒。





はっと目を覚ました、黒い部屋。





隣で、安らかに寝息を立てる温もりを確認して、溜め息をつく。





「礼、朝だよ、起きれる?」



「痛ぇ……」





悪い癖だ、と思いながら、部屋の明かりをつける。





「自業自得」





私は、無数の切り傷が刻まれた、礼の、左腕の手当てをする。







黒い黒い、礼の部屋。





黒いシーツで覆われたベッド、

黒いソファ、

黒いカーテン、





初めてこの部屋を訪れた時は、大人らしいシックな部屋だと思っていた。





けれど、私は、知ってしまった。





悪い癖。





この黒は、自傷行為による血痕を隠すものだと。







礼は、誰とでも寝る。





そして、汚れた汚れたと言って、自身を傷つける。



けれど、傷つきたい傷つきたいと言って、また汚れる。





礼は、誰とでも寝る。







私を隣に置きながら……







冗談じゃない、と思いたい。



私ではない誰かに与えられた傷を、私が慰めるなど、



冗談じゃない、と思いたいのに、





「大好きだよ、ゆり」





笑みを向けられると、縛りつけられたように離れられなくなってしまう。





そう、私だって、陥っているのだ。





悪い癖。





傷を舐め傷つき、その傷に癒され、また傷を舐める。





途絶えることのない、ループに。







手当てを終え、出勤する礼を送り出せば、





「大好きだよ、ゆり」





笑みだけが残る。







愛おしい……





ただ、それが、愛おしくて、堪らない。







礼を見送って、少し経った後、私も同じ場所へ向かう。







黒い黒い、



部屋のドアに、



鍵をかけて。







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