泥酔彼女
少し前に確かに秘書課の新人女子に告白はされたが、既に沢村への気持ちは自覚していたから、俺はその場で断った。
もちろんお姫様抱っこなんぞした覚えもない。
こいつの頭の中は今どうなってるんだ。
回路の繋がり方が分かんねえ。つか、何で泣く。
沢村が今ぼろぼろと涙を零しているのは、俺の所為なのだろうか。
どうしてやったら泣き止むんだろう。
ネクタイを掴むその手を上から掴んで引き剥がし、そのまま彼女を抱き寄せたのは、計算でも何でもなくて、俺なりに途方に暮れたからだ。
これでも学生時代はそれなりに遊んで、女の扱いには慣れてるつもりだったんだがな。
こいつを前にすると、俺は童貞並みにどうして良いか分からなくなる。
泣きじゃくりながら俺の胸板をぽくぽく叩いてくる手も華奢な身体も、俺の胸の中にすっぽり収まるほど小さい。
OK、もう一度分析しよう。
秘書課、お姫様抱っこ、米俵→泣く。
その心を考えるんだ。まあ米俵はさっぱり分かんねぇけど!
───あ。
閃いた俺は彼女の両肩を掴み、抱き寄せていた身体を少し離して、その泣き濡れた顔を正面から見下ろした。
彼女のその涙は、もしかして。