泥酔彼女
言えない。こんな雰囲気で絶対言えない。
ムードというものを作りたまえよ月島くん!
頑なに彼から視線を逸らす私に、彼は苛立ったようだ。
突然がっと頤を掴まれ、強制的に彼の方に顔を上向けさせられる。
唇が触れそうなほどに月島の顔が近付いて、またさっきのようなキスをされるのかとぎゅっと目を瞑り、私は身構えた。
だが彼は、ぽつんと一言呟いただけ。
「俺じゃ駄目なのか…?」
静かに向けられた問い掛けに、私はぱっと眸を開いて。
切なげに私を見詰める彼の表情を認めて、咄嗟に慌てて首を横に振った。
突然そんな捨てられた子犬みたいな目をしないで欲しい。
そうじゃない。そうじゃないんだよ。
大好きなんですよコンチキ!
今言わないと、彼が誤解してしまう。
ダンボールインした子犬が雨の日に川流れしているのを止めたがるように、必死になってしまう。