泥酔彼女
酔って記憶を失くす、というのが私に残された最後の抵抗の手段だと思うけれど。
悔しい事に、私はこの夜の記憶を忘れたいとは思っていない。
どのみち身体にしっかりと焼き付けられた彼の感覚が、私にそれを許してくれないだろう。
肝心の事を言わせてもらえなくたって、私と彼の心は繋がっている。
私は月島が好きだ。
言わなくたってとっくに伝わっているはずのこの言葉は、彼の寝顔に囁こう。
そして朝の光の中で彼が目を覚ましたら、言うのは別の事だ。
もう米俵はいやだからね。
それを聞いた彼はしばらくの間、解せない、という顔をして考え込んでいたけれど。
やがて何かが腑に落ちたのか、ああ、と一言告げて。
蜂蜜が滴るような甘さで、私に笑い掛けてくれたのだった───
【end】
