陽のあたる場所へ


「先輩、作家さんとの打合せは終わったんですか?今日はもう会社には戻らないんですよね?」

スケジュールの調べはついているようだ…
今日は、執筆依頼の打合せだけだったので、終わったら直帰、と言うよりは、帰りがけに作家の所へ寄る予定にしていたのだ。

「とにかく話聞いて下さいよ~!この前の店で待ってます。吉沢くんも呼んでありますから」 


腕時計を見ると7時。
このまま最寄り駅から電車に乗れば、15分ほどで帰宅できる距離まで来ていたが、それとは反対側のホームに回り、会社方面へと折り返す。

久し振りに早く帰ることができると思っていたのに…。
しかし、いずみの話を聞くという義務感だけでなく、沙織自身も真相を知りたいのだから、仕方がない。


彼に恋人が居るだろうということは、わかっていた。
タクシーの中の電話で、それらしい会話を耳にした事もあったし、龍司がとんでもない〝 契約 〟を持ち掛けて来たあの日の会話の中でも、そういう人が居る事を彼は否定しなかった。


その相手が、いずみの同級生だと言う。 
沙織にとっては知らない相手でも、いずみにとっては知人。もしかしたら、当時は仲が良かったのかも知れない。
複雑どころか、悔しいという気持ちもよくわかる。

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