陽のあたる場所へ


沙織は、店の前まで来て考える。

これから、龍司の恋人について、詳しい話を聞きに行く。
きっと聞くだけでも落ち込む。
なのに、同じく落ち込んでいるであろういずみを、平気な振りして慰めたりしなければならない。
今日、自分がここへ来た役割は、そういうことだ。
大丈夫なのか?

適当な理由をつけて断ることもできたのに、どうして来てしまったんだろう。
今ならまだ間に合う。店に入る前なら、仕事の話が入ったと言って断れば良いのだ。



「海野先輩!お疲れ様です。もしかして先輩も久留宮に呼ばれたんですか?」

店の手前で躊躇していたら、後ろから吉沢に声を掛けられた。

「何なんですかね?久留宮のヤツ。『一大事なの!だから話聞いて!この前の店ね。待ってるから』ブツッ!ですよ。言いたいことだけ言って切りやがった」

そう文句を言いながら沙織の横に来て、ドアを開け、無言で先に入るよう促されたので、ありがとう、と言って入るしかなくなってしまった。
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