陽のあたる場所へ


少し安心して顔を上げると、見慣れた人影が近付いて来るのに気付いた。
ロビーを、龍司と舞子がこちらに向かって歩いて来た。
咄嗟に沙織は、柱の陰に隠れる。

舞子の左腕は、龍司の右腕に絡まっていて、龍司もごく自然な感じで、二人の身体は密着したまま、何か言葉を交わしながら、通り過ぎて行った。



「謝るつもりで電話したのに、慰めてもらっちゃって。ありがとうございます。本当にごめんなさい」

沙織の胸の中に、得体の知らない何かが急に込み上げて来て、すぐに返事ができなかった。


「沙織先輩?…どうかしました?」

急に涙が込み上げて来て、沙織は、いずみに気付かれないように、上を向いて息を大きく吸った。

「ううん…大丈夫」

それだけ返事するのがやっとだった。

「…沙織先輩?…もしかして…」

「大丈夫。気にしないで。じゃ、またご飯行こうね」
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