陽のあたる場所へ
扉の近くに立ち、電車の揺れにただ身を任せる。
電車の中には沢山の人が乗っているが、全ての人がみんな他人だ…
誰も、私の心の中など知らない、知る筈もない。
誰も助けてはくれない。
沙織は扉の冷たい窓ガラスに額をつけて、必死に涙を堪えた。
涙を押し戻すように、大きく息を吸ってゆっくり吐き出した。
窓ガラスが白く曇り、その白はゆっくりと消えてなくなって行く。
ふと窓の外を見ると、白く小さな粒が舞っていた。
家からの最寄り駅に着き、改札を抜ける。
駅の構内から出ると、いきなり冷たい空気に全身を覆われた。
立ち止まって見上げると、暗みを帯びた紺色の空の遠く高い場所から、雪の粒が、幾つも幾つも舞い降りて来た。
それは、沙織の頬や鼻先に当たってはすぐ溶けて行く。
改札を通り過ぎた人々が、散り散りに家路方面に向かって行く。
この冷たい空気の中、寒さに耐えて家に戻れば、人々は暖かい部屋で温かい家族が待っているのだろう。
沙織の横を沢山の人達が通り過ぎて行き、やっと周りに人が居なくなったと思ったら、気が抜けたのか、瞼の裏が熱くなった。