陽のあたる場所へ
「仕事とかじゃなさそうだな。男か…付き合ってる奴と、うまく行ってないのか?」
「…う…ん。でも付き合ってなんかない。彼は他の人と結婚するんだから…。この年で完全なる片想い。笑っちゃうでしょ?」
沙織は、無理に笑って見せる。
「笑えねぇよ」
ぶっきらぼうにそう言いながら、沙織の頭を押さえた亮の右手が後頭部に移動すると、そのまま抱き寄せられた。
「え?りょ…」
「沙織、沙織…。こんな時にこんなこと言うのは、卑怯だってわかってるけど…俺、やっぱりお前が好きだ。
お前と別れてから、滅茶苦茶後悔した。
何度も〝迎えに行くから、ついて来て欲しい〃と言おうかと考えた。でも、精神的に言えるような状態じゃなかったんだ」
温かくて懐かしい匂いがする亮の胸の中で、つい目を閉じて甘えたい感情に囚われそうになる。
「海外赴任が決まった時、〝新規事業チームの一員に抜擢したんだから、生半可な気持ちで行って貰っては困る〟と、会社から言われてたんだ。
実際、かなりハードで自分のことだけで精一杯だったから、こんな状態で沙織を連れて来なくて良かった、とも思ったし、だからこそ側にいて欲しいとも思った。
そんな気持ちと闘いながら、月日が過ぎてしまったんだ」