陽のあたる場所へ


兄はその事実を、親戚筋の上役同士が話しているのを聞いてしまったらしい。


「お前と義母さんが家に来ることになったあの頃、俺は高校生で、世間で言うところの『思春期の複雑な年代』だった。他人がいきなり母親と弟になるんだからな。小学生の龍司と違って、手放しでは喜べなかったよ。

でも、義母さんは、放任する訳でもなく、遠慮し過ぎることもなく、かと言って、母親面してズカズカ踏み込んで来る訳でもなく、いつも俺の話をちゃんと聞いて俺の意志を尊重してくれた。
お前は、無条件に俺を慕ってくれて、一人っ子で育った俺は、それがくすぐったいようで嬉しかった。
最初は馴染めなかったけど、だんだん家族になって行けたような気がしてた。

だから、義母さんがずっと前から親父の愛人だったとか、俺の母の死が龍司が産まれたことがきっかけだったとか、そんな話を初めて聞いて、ショックなんてもんじゃなかったよ。

暫くは、義母さんともお前とも顔を合わせたくなくて、仕事が忙しいのを口実にみんなが寝静まった頃に帰ったりしてたんだ。
父の会社で部下として働くことにも、嫌気が差していた。

丁度その頃、支社への異動が決まり、家を離れることになったので、親父と顔を合わせる機会も減り、俺も少し頭を冷やすことができた。

いろいろ悩み考えたが、今は、この距離感でなら、何とかやって行けると思っていたんだ。
俺さえ黙っていれば、どこにも波風は立たない。
だから、俺がこの事実を知ったことは、自分の胸にしまっておこうと思ってた」

兄は、そこまで噛み締めるように話すと、大きく溜め息をついた。

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