陽のあたる場所へ
こんな辛い事実を知ってしまったのに、兄は俺に、そして母にも、それをずっと隠していてくれた。
憤りの気持ちがあって当然なのに、俺達を責めずにいてくれた。
でも、いくら仏の顔を持つ兄でも、その当人である俺の裏切りに会ってまで、仏の顔を保っていられないのは当然だ。
「お前と絢音と、どっちが踏みこんだのかなんて、もうどっちでもいいよ。
弟も、恋人も、俺にとっては大切な存在だったんだから…どちらに裏切られたって同じことだ」
今まで大好きだった父と母に対して、憎しみの気持ちが沸々と湧いて来た。
けれど、それ以前に、それとは別にして、俺が兄をとんでもない形で裏切ってしまった事実は消えはしない。
「ごめん…兄さん。
多分、絢音さん、兄さんに好きな人ができたと思って、ヤケになっただけだと思う。
とても辛そうにそう話してたから…。
隠れて俺とずっと付き合ってたとか、そんな関係じゃない。それは誓うよ。
俺、二度とこんなことしないと約束するから、もう一度、絢音さんと…」
俺は、兄に許しを乞える立場でさえない。
それはわかってるけど…、
ただ謝ることしか、
そして、絢音さんを兄の元に返すことしか、
できることなど何もない。