恋は盲目
「司」
司は誰も来ないと思っていたのか、振り向いて私の姿を見つけると驚いた表情をみせた。
「朋…」
私は古めかしいドアを閉め、司と向き合う。
「いつも部室で、ひとりで本読んでるんでしょ?」
私は司が書店のカバーで覆われた、一冊の小説を指さし言う。
「朝とか昼は、誰もいなくて静かだからな」
司は読んでいる途中の小説にしおりを挟み、小説を机の上に置いた。
「朋が昼に部室に来るなんて珍しいな」
この前のこともあり、会話に微妙な緊張感が生まれる。
二人の間に流れる沈黙を破ったのは私だった。
「わたし、龍ちゃんと別れたよ」
そう告げると、司は先ほどよりはるかに驚きと戸惑いが入り交じったような表情を見せる。
「そう、なのか」
私はひきつりながら笑い、首を縦に振った。
「もう龍ちゃんとはダメなこと、わかってたの」
私は司から目を逸らして、少しうつ向きながら話を続ける。
「司に言われて、私は迷い始めたの。このまま一緒に居ても、心から幸せだなんて感じられないんじゃないかって。だから、もう終わらせるべきなんじゃないかって」
私はマフラーに顔をうずめる。
「4年間、ずっと好きだったの。でもいつだって龍ちゃんは、他の人のものだった。私の入る隙なんてなくて…」
目に涙が滲んで、声が震える。
「そばにいたかったよ…」