アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
「シェヘラザードって、王を愛していたんでしょうかね?」
その夜、遥人の寝室で、那智はそんなことを呟いた。
今日は那智の部屋、という案は那智が却下した。
まだ桜田が居たら、なんだか厄介なことになりそうだったからだ。
どっちも話、通じないからな……。
そういう意味ではこの二人は似ている。
そう思いながら、人の膝の上でも偉そげな遥人を見下ろした。
そういえば、顔が整い過ぎなところも似ているな、と思う。
「お前は色気もくそもないが。
そういうことを考えてわかるのか。
というか、そもそも、お前に、今まで好きな男なんて居たのか?」
「……膝から落としますよ。
それから、私にだって、好きな人くらい居ましたよ」
そう言ってみたのだが、遥人は、
「どうせ、学生時代の先輩とかだろう」
と小莫迦にしたように言ってくる。
「いけませんか、それ~?」
と眉をひそめたあとで、でも、違いますよ、と言った。
「私の初恋は、お父さんです」
遥人は、は? という顔をし、頭をもたげようとする。