アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
「いや、ああ見えて、格好よかったんですよ、うちのお父さん」
と言うと、

「ああ見えても、こう見えても、見たこともないんだが」
と言われ、

「……そうでしたね。
 んー、まあ、仕事柄、滅多に見かけなかったし。

 お父さんっていうものに憧れがあったから、そう思ったのかもしれませんけどね」
と答えた。

「『お父さん』なら、今も居るんじゃないのか?」
「は?」

「お前の母親の恋人はお前の父になるんじゃないのか?」

「あの二人、結婚はしないんじゃないですか?
 ちょっと若過ぎて。

 犯罪ですよ。
 あの人、ほんとに若い男の人が好きで」

 どんな母親だ、と遥人が呟く。

「まあ、そんなこんなで、お父さん見て、結婚するのなら、こういう感じの人がいいなあって子供の頃は思ってました。

 ……大人になったら、思わないですけどね」

 いろいろ見えてきて、と言うと、
「どのみち、それ、恋とは言わないだろう」
と言われた。

 子供のときには見えなかった親のアラが見えてくるのは、いいことなのか、悪いことなのか。

 一生見えなくても問題あるだろうし。

「でも、娘にそう思ってもらえたら、父親としては、大満足だろうな」
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