アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜



「で、私は五年生のそいつに対抗するために、勢いで手を挙げただけだったんですよ。

 そしたら、先生が、やっぱり、委員長は、六年生でって言い出して。

 他に誰も手を挙げてなくて、結局私が……

 ああっ。
 寝ないでくださいよっ」

 笑いながら、寝てしまったらしい遥人を思わず、揺すろうとする。

 いや、寝かしつけるんだったな、この人を、と気づいて、踏みとどまった。

 だが、このまま行ったら、いつも最後まで聞いてもらえないので、毎晩、ベルマークについて語ることになるのだが。

 いいのだろうか、これで。

 この千夜一夜物語、本にすると、偉く短くなってしまうぞ。

 千夜一話物語だ。

 まあ、王様を改心させるんじゃなくて、寝かしつけるのが目的だからいいんだけど。

『シェヘラザードって、王を愛していたんでしょうかね?』

 そんな自分の言葉が、ふと頭をよぎった。

 スタンドの明かりに照らされた遥人の顔を見て呟く。

「あの王様もこの王様も厄介な人だな、ほんと」

 この人の場合は、王様っていうより、王子様かな。

 そんなことを思いながら、那智は布団をかけ直してやった。


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