アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
「今日も帰らなかったのか」
「はい」
朝目覚めたとき、遥人がそう訊いてきた。
「帰りそびれたんですよ。
遅くなると、面倒臭くて」
「俺は別に構わないんだが。
タクシー代も置いておいたろう」
使わなかったのなら、金を持って帰れと言い出す。
「いりませんって。
お金受け取ると、ほんとに愛人でもやってるかのような気分になるんで」
「……何度も言うようだが、お前は、此処に話をしに来てるだけだからな」
少し不満げに言うので、
「膝枕もしてあげてるじゃないですか」
と言うと、段々、態度がでかくなってきた、とかなんとか呟いていたが、そう嫌そうではなかった。
「まあ、金を受け取らないのなら、今度、服でも買ってやろう」
「いや……ますますおかしな感じになるんで、余計な気は使わないでください。
あ、じゃあ、タクシー代だけくださいよ。
今日も乗せて帰ってもらっては悪いので、タクシーで戻りますから」