アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




「ただいまー」

 那智はソファに鍵を投げかけて、踏みとどまる。

 おおっと。

 帰った解放感から、よくこういったことをやって、出かけるとき、鍵がないっ! っと騒ぐはめになるのだ。

 桜田はもう居ないようだった。

 先程まで人が居たときに感じるような、気配というか、ぬくもりもない。

 そういえば、帰らなかったのに、電話もしてこなかったし。

 昨夜は此処には立ち寄らなかったのだろうか。

 居ないと思うと寂しいな。

 慣れたつもりだが、この大きな部屋に、一人はやっぱり寂しい。

 ……桜田さんが来ないのなら、今夜はうちでもいいかな、と思った。

 この家で、誰かと話しながら眠ってみたい。

 いや、まあ、話してるの、主に私だけど。

 だが、桜田のことだ。

 まだ、この辺りで仕事しているのなら、ふらっと現れそうで、油断はできない。

 っていうか、専務、カピバラってなんですか……。

 シャワーを浴びにバスルームに入りながら、ふいに昨夜の会話を思い出す。
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