不機嫌な恋なら、先生と
編集長が言った責任という言葉が頭を過った。
こんな中途半端な対応は、無責任だ。
先生は、忙しいなか調整して、小説の取材の為に来たんだ。それなのに、何も考えずに飛び出してきてしまった。
今、先生に迷惑をかけようとしてるんだ。
本当のことを言ってちゃんと謝ろう。
「箱崎さん?」
私は顔を上げた。
「先生、すみません、今言ったことなんですけど、えっと……本当は、トラブルの原因は私なんです。
それで企画自体変えて、代わりのモデルを探しているところなんですけど、私、どうしてもその子に今日の撮影に来てほしいんです。
彼女、最後なんです。たぶん、来なかったら、後悔すると思うんです。
だから、今から、話をしに行こうと思ってたんです。
で、行くなら、今行かないと時間がなくて……すみません。
ぶっちゃけ先生との取材のお約束も忘れてました。
もう……いっつもこうなんです。ミスばっかりして。みんなに迷惑をかけて」
まくしたてるように言っていた。
言ってから、こんなに言うつもりじゃなかったと、後悔し不安になった。だけど先生は笑った。張ってた気が緩みそうになるくらい、無邪気な顔で。
「なっ……なんで笑うんですか?」
「いや。なんかさ」と、口ごもってから言う。
「急に正直すぎること言うから」
「だって……」
「じゃあ、一緒に行ってもいい?」
「え?」
「箱崎さんの取材に来たわけだから。相手の子とはどこで約束してるの?」
「あ、携帯繋がらなくて、今からその子……花愛ちゃんの家にでも行こうかなと」
「花愛ちゃん……あれ?」と先生は思い出したように言った。
「昨日、取材の為にと思ってGrant読んでみたんだけど、その子、さっき見かけたよ」