御曹司と溺甘ルームシェア
「……だ、大丈夫よ。キスなんて人によってきっと違うわ」

「響人君ってキス下手だったの?」

ののちゃんの突っ込みに絶句する。

評価しようにも他のキスを知らない。

だが、あんな忌まわしいキス、下手でいい。

「……そうよ。下手なのよ、響人」

私は苦い顔で響人を罵った。

「そうなんだ。響人君キス下手なんだね。何でも上手に出来るのに、響人君でも上手に出来ないものもあるんだ」

……出来ればこの話題から離れたい。

私にはキスを語れるほどの経験がないのだ。

そんな事を考えていると、店員がケーキと紅茶を運んできた。

「ののちゃん、ケーキ美味しそうだね」

「うん!」

お互いのケーキを半分切って交換し、口に頬張る。

「「う~ん、美味しい!」」

ののちゃんと目を合わせてニンマリ笑う。

この喜びは女同士でないと味わえないだろう。

だが、このままのほほんと小さな幸せに浸っていてはいけない。会話の主導権を握らなくては……。
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