クールな社長の甘く危険な独占愛

「お父さんの会社に入るんですか」

さつきが尋ねると、社長は鼻で笑った。「親父はそのつもりだろうな」

そう言った社長の口元が今にも泣きそうで、さつきはまたもや手を伸ばしたくなった。

頭を抱いてあげたい。「大丈夫」って言ってあげたい。
でも大丈夫なことって、あるんだろうか?

「まあ、頃合いだ。俺もそろそろ逃げるのをやめなきゃならないってわかってたから」

社長がソファに身体を預ける。
「さつきにも、迷惑をかけたな」

さつきはドキっとした。

このあいだの話の続きをしようとしている。
わたしを、手放そうとしてる。

どうしよう。
わたし、わたし……。

「いやです」
思わず口に出した。

薄闇の中社長がさつきを見つめる。瞳が潤んで、外の明かりが反射している。

さつきは心臓がばくばくしてきた。胸に手を当てる。

「……何が?」
かすれるような社長の低い声。

目が離せない。

「あの、だから」
さつきはしどろもどろになった。

「わたし、いやです。社長が、あの……社長じゃなくなって、わたしから、わたしの目の前から」

だんだん声が上ずってきた。涙がこみ上げる。メガネを外して、目を強くこすった。

瞬間、フレームを持つさつきの指に暖かな感触。はっと目を開けると、社長の長い指がさつきの指を握っていた。

「さつきの目の前から、何?」
社長の息を飲むほど美しい顔が、さつきの顔を覗き込んでいる。

視線に飲み込まれる。

さつきは息をするのを忘れた。



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